人生初パブコメを送った。
このTweetを見て、「アプリ開発者」だけじゃなくてWebkitへの言及もあるんだ〜って思って眺めたのがきっかけ。
内閣官房のパブコメ募集なんだけど、資料が割とがっつり情報量があるのと中間まとめが割と踏み込んでいるのとで読みごたえがある。 https://t.co/hisJtnYwFb
— Atsushi Eno (@atsushieno) 2022年5月12日
「主に御意見をいただきたい事項」に特にアプリ開発者からの情報を求められている箇所も多くて技術者コミュニティで共有されるとよさそう。 pic.twitter.com/gTwBJu2lXu
2022年6月10日23時59分まで送れるので、皆さんも送ってみると良いかと思います。(この記事を書き始めたときはまだ5月だったんですが、公開し損ねてたら直前になってしまいました)
せっかく自分の主な関心が向いているPWAやウェブブラウザのAPI対応などについての内容も多くあったので、普段それらに関心を寄せ、またそれらのエコシステムの上で開発をして日銭を稼いでいる人間としてのコメントを書いていたら4000字くらいになったので、シュッと送信した。
主な要旨はこういう感じのことを書いた
- こういったウェブブラウザの実装などについて言及するのなら、報告書には含まれていなかったが、WebKitのバグ報告トラッカーがオープンではない(オープンであるが、実際にはほぼレスポンスも得られず、有意義なやり取りをすることはほぼ出来ない)ことに言及してみてはどうか
- 「有力ウェブ・サービスにおける仕様変更等によるブラウザへの影響(Google) について」の記述で表記されている意見が結論ありきのGoogleに対して批判的すぎるものしか並んでいないのではないか
- Chromiumの開発をしているGoogleの社内の開発者やチームと、Google検索やYouTubeなどの個別のウェブサービスを提供しているGoogle社内の開発者やチームを過剰に同一視している結果、「Googleの検索結果で動く電卓がChromeでしか動かなかったのは、GoogleがChromeを優遇するためだ」という意見になってしまうのではないか
- ブラウザを提供する事業者は自社サービスで自社ブラウザを優遇を禁止するというのは、現状のウェブブラウザの機能を検討するの土台として自社のサービスを使えなくするということでありナンセンスではないか
- こういったことにコミュニティや他社もフィードバックをするための仕組みとしてOrigin Trialとかも存在しているはず
- 「WebKit の利用義務付けとブラウザにおけるウェブ・アプリに対する消極的な対応(Apple)について」は概ね同意できる内容ではあったものの、提示されているオプションについては懐疑的
- WebKit 利用義務付けの禁止は一見魅力的に見えるが、現状でウェブブラウザ(エンジン)を提供できる企業・開発者は限られていて*1、結果的に問題解決には結びつかないのではないか(WindowsでChromeがシェアを多く獲得したようにChromeがさらにシェアを拡大するか、結局デフォルトのWebKitの独占が続く(Androidでは自由にブラウザを選べるがデフォルトのChromeのままのユーザーが多い)
- オプションBの「一定規模以上の OS を提供する事業者がブラウザを提供する場合には、ウェブ・アプリをサポートするブラウザの機能の提供に関し、他のモバイル OS 上のブラウザに提供されている機能と同等の機能を自社ブラウザでも提供することを義務付ける規律」の「他のモバイル OS 上のブラウザに提供されている機能」という表現は結局Chromeと足並みを揃えよということなのであれば、Chromeを助長させることにしかならないのではないか。せめてこのような表現をするのであれば、WebにはWHATWGが策定している標準仕様があるので、そのようなものを参考にする表現になるのが良いかと思った
そしてコメントの最後はこういうメッセージでシメた。
報告書全体を通じて、GoogleやAppleなどのベンダーを一方的に否定するような書きぶりになっていますが、彼らがそもそもウェブブラウザやエンジンを開発していなければ、WHATWGやECMAScriptなどの仕様を前に進めたり、そのウェブブラウザの上で我々が体験をユーザーに提供することが出来ないという現実もあります。それらを健全に競争させることは勿論重要ですが、彼らを不必要に押さえつけるような結果になり、日本が総スカンを食らうことのデメリットについても考慮されたいなというのが感想です。それぞれの相互の立場をフォローした上で、健全な競争環境に寄与する最終提言または政策提案になることを期待しています。
少しでもこういったことが関係者の方々に伝わって、日本国としての政策などとして有意義なものになる(無意味なスベっているものにならない)ように祈っています。
*1:ウェブブラウザの開発ができる開発者が限られている旨は報告書の冒頭でも言及されている既知の前提