ぱすたけ日記

日記っぽいのを書きます。

著作権法改正 スクショ違法化 ウェブサービス

著作権法改正の話題でスクショが違法という文言がインターネットで流布されているので、基になっている報告書などを読んだ様子をここに記します。 またインターネット上において、スクリーンショットを扱うウェブサービスを利用することが違法になるのではないかという懸念が示されている*1のを散見しましたので、合わせて関連する報告書などを紹介します。

この記事及び貼っている@pastakのTweet等は個人の見解であり、また筆者は法律の専門家ではないため、解釈などは記載しないように心掛けますが、必要であれば自身で専門家に相談してください。

報道内容について

まずは話題の基になった記事です

著作権を侵害していると知りながら、インターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードすることを全面的に違法とする方針が13日、文化審議会著作権分科会で了承された。

著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定:朝日新聞デジタル

これまでは音楽と映像に限って違法だったが、被害の深刻な漫画の海賊版サイト対策を機に、小説や雑誌、写真、論文、コンピュータープログラムなどあらゆるネット上のコンテンツに拡大されることになった。個人のブログやツイッターの画面であっても、一部に権利者の許可なくアニメの絵やイラスト、写真などを載せている場合は、ダウンロードすると違法となる。

著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定:朝日新聞デジタル

メモ代わりにパソコンやスマートフォンなどの端末で著作権を侵害した画面を撮影して保存する「スクリーンショット」もダウンロードに含まれる。

著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定:朝日新聞デジタル

朝日新聞デジタルのタイトル 著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定 がなかなか見事な感じなのですが、要旨としてはこういう感じです。要するにポイントは次の3点です。

  • 違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードするのは違法
    • この範囲がこれまでは映像と音楽だった*2が、それを静止画や文章にも広げようとしている
  • また、スクリーンショットも保存と看做す
  • 合法なコンテンツをスクリーンショットするのはこれまでもこれからも合法である

私的な利用であっても、違法にアップロードされた海賊版と知っていれば違法となる。スマートフォンなどの画面を画像として保存するスクリーンショットも含まれる。

社説:ダウンロード規制拡大 ネットの自由、狭めぬよう - 毎日新聞

文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の報告書について

この報道のきっかけとなった文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の報告書は http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/r1390054_02.pdf から読むことが出来ます。

この中でスクリーンショットに言及しているのは4箇所です。以下に引用します。うち1箇所は脚注なので、うち3箇所を引用します。(強調の太字は著者によるものです)

7適法コンテンツのスクリーンショット等の際の写り込み

重要な情報と同じページに違法にアップされた著作物が存在する場合(SNSのアイコンに違法物が使用されている場合など)に,スクリーンショット等で保存しよう とすることが困難となる。

文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会 報告書 70ページより ref: Screenshot - 文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 報告書.pdf - Gyazo

音楽・映像以外の著作物(静止画・テキスト等)については,典型的な海賊版サイトのみならず,個人のブログやSNS等においても違法にアップロード されたものが掲載されている可能性があり,ユーザーが気軽に,スマホやタブレット等を 活用してダウンロード(右クリック保存やスクリーンショット)を行う可能性もあり,こ れが違法化の対象範囲に含まれる場合には,より国民生活への影響が大きくなり得る。

文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会 報告書 82ページより ref: Screenshot - 文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 報告書.pdf - Gyazo

スクリーンショットをダウンロードの説明に利用している一方で、スクリーンショットに写り込んだ際の扱いについても議論されています。違法にアップロードされた著作物であると知りながらダウンロードまたはスクリーンショットすることを違法化しようという動きであることがわかります。

スクリーンショット等を取り扱うウェブサービスについて

また、スクリーンショットを扱うウェブサービスに関しても、クラウドサービスと著作物の関係について平成27年2月に同じく文化審議会著作権分科会の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会からの「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」から関連すると思われる箇所を紹介します。

ユーザーがアップロードし、多数の利用者がアクセス可能な場合は

利用者が権利者の許諾なく著作物を他者と共有することは,基本的に公衆送信権侵害等に該当するため,権利者の許諾が必要である

文化審議会著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 クラウドサービス等と著作権に関する報告書 10ページより

ユーザーがアップロードし、ユーザー自身のみがアクセス可能な場合は

基本的には,利用行為主体は利用者であり,当該利用者が行う著作物の複製行為は,私的使用目的の複製(第30条第1項)であると整理することができ,権利者の許諾を得ることは特段不要であるとの意見で一致した」また、「当該サービスにおいて行われる送信行為についても,権利者の許諾の要否が問題となるが,利用行為主体が利用者と解される場合には,当該サービスにおいて行われる送信は,利用者が自らに対して送信を行っているものと解されるため,著作権法上の公衆送信(第 2 条第1 項第 7 号の2)には該当しない。したがって,当該送信についても,権利者の許諾を得ることは不要と解される

文化審議会著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 クラウドサービス等と著作権に関する報告書 15ページより

としつつも、その行為主体が利用者であると認定されるかは個別に判断されるとの意見も記されています

複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当

文化審議会著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 クラウドサービス等と著作権に関する報告書 15ページより

URLを流通させずに自身でアップロードし自身のみがアクセス可能な場合に私的利用の範囲だと認められると判断するのが妥当ということのようです。合法に流通しているコンテンツをスクリーンショットし、自身だけが見れるようにアップロードする行為などがこれに該当しそうです。

まとめ

ところでこの話題、著作権的にグレーな二次創作物のダウンロードが違法化されるのではという懸念があるようです。

皆さんもタイトルに踊らされないようにしましょう。

一方で立法時また運用時にこの報告書の方針がどこまで採用されるかという問題があります。安心せずに今後の国会情勢や警察などの法の運用について今後も注視していきましょう。インターネットで悪を働くのは許せませんがそのために我々が自由なインターネットを失うのも耐え難い。そう思います。