2024年2月4日は京都市長選挙の投票日でした。
この記事が公開されているであろう20時には投票箱が閉じられ、開票作業に移り、京都新聞によると23時頃にはほぼ結果が出そうということらしいです。
今回の2024年の京都市長選挙の振り返りと私感を書いておこうと思います。タイムラインについては2024年京都市長選挙のWikipediaのタイムラインの項が執拗に詳しいので合わせてどうぞ。
4年前の京都市長選挙は当時現職の門川大作を共産党などが推薦をした福山和人が追うという展開で、何故か門川大作陣営が新聞広告でのネガキャンを始めたりして接戦気味に見えていたものの蓋を開けると約5万票(得票率に換算すると10ポイント)の差で門川大作が当選するという展開でした。共産党の強い左京区を除いた全ての開票所で門川大作が勝つという結果でもありました。また、元京都市議会議員で元京都党党首の村山祥栄は得票率20%で3位でした。
そこからは国政選挙においても前原誠司が国民民主党を離党することになったりとその前後もあれこれと掻き回していました。その流れで前原誠司が京都市長選挙の所謂「共産vs反共産」の構図から抜け出すことで選択肢の構図が変わることを仄かに期待していました。実際、京都党と日本維新の会は選挙協力をしていましたし、京都市議会においては、会派としては維新と国民民主が合流していたので、そこが一緒になって、次の市長選では村山祥栄を後押しする形になるだろうなと。
その結果、京都市長選挙の足音が聞こえてくる頃には日本維新の会が村山祥栄の擁立を行うという報道が出ました。
最終的には日本維新の会に加えて、京都党・国民民主党(京都府連)・前原誠司新党の「教育無償化を実現する会」が推薦を出すということで、前回の京都市長選挙よりも強力なバックアップが村山祥栄に敷かれることになりました。
前回の京都市長選挙では、門川大作市政への反感も多い中でありつつも、所謂共産党アレルギーのようなものもあったはずですが、そこに第三極として村山祥栄が上手く立ち回ることが出来なかった印象だったので、そこに京都では一定の力や人気を持つ前原誠司が共に選挙戦を戦うことで、村山祥栄が勝てる線がかなりあるように見えていました。実際、京都の人たちはアンチ大阪の延長線でアンチ維新でもある人が多かったですが、一方でこれまでの自民民主相乗りへの反抗として維新にベットする人たちは先の国政選挙などでもかなり増えていたので、ここが合わさるとかなりの競り合いが出来るのではというのが個人的な予想でもありました。
2023年の年末から国政では、自民党派閥によるパーティ券キックバックによる裏金が仕切りに報道されるようになりました。そんな中、2024年の早々に村山祥栄に政治資金パーティーを巡る疑惑が浮上、推薦を表明していた4党は推薦取り消しを表明、村山祥栄は引き続き立候補する意向を示しました。
ちなみに、しんぶん赤旗によりますと、松井孝治候補の選挙母体「文化首都京都を創る会」のパーティではミネラルウオーター1本で会費1万円を集めていたそうです。やってみたいですね。
そんなことがあり、個人的には村山祥栄が勝つ絶好の足場が揃っていたように見えたにも関わらず、しょうもないことでその足場を自ら爆破したことで、京都市民はまたしても「共産vs反共産」の構図を目の当たりにすることになりました。
4人目として立候補を表明していた、自民元府議の二之湯真士は自民党京都府連を辞職しようとするも除名され、YouTubeで仕切りに西田昌司への批判を展開していました。父も自民党京都府議連の重鎮である二之湯智*1なので、とにかく脱自民党イメージを押し出して戦おうとしていたのでしょうが、気付いたら、KBS京都の討論会などでどんな議題でも北陸新幹線に話題をねじ込める「北陸新幹線1兆円芸人」みたいになっていました……
YouTubeで毎日配信をするなど今どきの若手政治家という感じで好感が無くもなかったのですが、自民党を離れたことでイマイチ選挙戦が上手くなく、二連ポスターを頼む相手も「令和の虎」で人気を獲得した「はあとねいる」を展開する小原麻央社長ということで、イマイチどうもピンと来てなかった感があります。五条通を利用したLRT構想は結構良い感じだと思ってただけに、もう少し善戦してもらいたかった。
と、まぁこういったラインナップに全てが謎の候補者、平安保守党の高家悠を加えた5人で選挙戦が始まりました。高家悠は顔写真の提出もなく更に選挙ポスターもなければメディアにも何も答えないという謎っぷりで、また選挙公報は提出していたのですが、何故か「モノレール案は廃止」と書かれていて、モノレールとは?リニアのことか?とこれまたザワザワと一部の界隈を盛り上げていました。
選挙告示前の報道で名前が上がっていた寺田浩彦は何故か立候補をしませんでした。このことをXで投稿したところ、寺田浩彦本人からXでのメンションで「タイムライン見てくれ(爆笑)」と言われましたので、タイムラインというのは本人の投稿のことだろうと理解をし、わざわざ投稿を遡って見ましたが、各団体の主催する討論会に呼ばれなかったことへの恨みつらみが記されていたものの、肝心な何故告示日に立候補を届け出なかったのかが書かれていなかったので、結局謎でした。まぁ彼は他の首長選にも色々立候補を表明したりなんなりしているので、アレなのでしょう。
京都市民の大勢としては4期16年続いた門川大作市政をどう評価するかという選挙でもありましたが、そんなこんなで今回の京都市長選挙も「共産vs反共産」の構図になってしまったので、「門川大作市政脱却」且つ「反共産党」の人々にとっては非常に選択肢に希望のない選挙になりました。ここに村山祥栄がこの構図に上手く潜り込むことで勝ちの線が見えていたはずなので、本当に大いに反省してもらいたいところです。
京都市長選挙の争点としては、京都市の財政改革をどのように進めるかを中心に、人口流出に対する対策やそれに関する子育て支援、所謂オーバーツーリズムになどの観光客対策、またどれくらいの市民が実感をもって論点としているかは若干の疑問がありますが選挙戦では北陸新幹線の延伸問題もしきりに取り上げられていました。
大きな枠組みの主張については、各メディアのアンケートなどで各候補の主張が載ってましたので、ここでは省略します
個人的に今回非常に注目をしていたポイントを1つ挙げると、全ての候補が新規の財源として「宿泊税」の値上げに留まらず、実質的な「古都保存協力税」の復活にも言及していた点です。「古都保存協力税」(通称「古都税」)は京都市が1985年(昭和60年)から1988年(昭和63年)の間、市内文化財の保存整備推進のために徴収していた法定外普通税*2で、この当時は構想打ち出し以降京都市と市内寺社は対立し、有名寺院等による拝観停止になるなど騒動が続き、施行されるも3年で廃止になったものです。その後京都市ではタブー視されてきた面がかなりありましたが、今回の選挙戦では多くの候補がこの古都税の復活にも言及をしていました。選挙活動では隣に法然院貫主の梶田真章を置いていた福山和人も「観光協力金の創設」としてこの古都税と同じスキームを挙げていました。この古都税に関しては復活でどの候補も大体20億の収入を見込んでいて、これらは京都党で京都市議会議員の大津裕太のnoteでも26億程度とされていて概ね外れてなさそうなのですが、実際現代にまたやれるのかというのは大いに謎です。また宿泊税に関しては現在の目的税から一般税にするというアイデアも複数の候補から出ていました。
選挙戦を一週間戦った後の各メディアによる情勢調査はほぼ同じ論調で、「松井孝治氏と共産支援の福山和人氏が横一線」(読売新聞情勢調査)で、「二之湯真士氏、村山祥栄氏らは苦しい」(朝日新聞情勢調査)また、「二之湯氏と村山氏は無党派層からそれぞれ1割の支持を得ているが、支持の広がりが見られない。」(同前)と。またそれはそうやなという感じですが、「諸派の事業家、高家悠氏(35)は厳しい」(共同通信)ということで、最後の1週間は福山和人がいかに追い上げが出来るか、松井孝治が支持を広げつつ逃げ切れるかという選挙戦になりました。
そんな中での木曜日、自民党京都府連会長で安倍派の西田昌司にも所謂「パーティー券裏金」があったことが発覚、「選挙の最中、非常に、誠に申し訳ない」*3 との弁が出、これがどうさらに情勢に効いてくるかという感じもありましたが、まぁ個人的な感覚ではこれで票が大きく揺れることはないだろうなと思っていました。アンチ自民のための材料は既に出切っていたので、この話題で福山和人や二之湯真士は元気になっていましたが……
京都新聞などもこぞって横一線を報じている中、実際に松井・福山の両陣営がどういう感じなのかを冷やかしに行こうと、2月2日(金)に連合京都主催の松井こうじ個人演説会へ、2月3日(土)にJR二条駅西口での福山和人街頭演説に行ってきました。
まずは松井こうじ個人演説会について。連合京都主催ということもあり、ほぼ出席者は各組合の関係者が大半でした。そりゃそうか。日教組の名簿はガラガラでした。18時からだったので、15分前くらいに意気揚々と到着したところ、前の方が空いてたので一旦5列目くらいに座るも、その後も前が空き続けていてかわいそうだったので、最前列真ん中に移動した。
すると、早速目の前に早速門川大作が登場。ちなみに今日の壇上の人用の水はいろはすでした。
京都府知事の西脇隆俊も現れ、連合会長の原氏の挨拶からスタート
連合から各組合に電話作戦に関するお願いがあり、電話作戦って未だに効果があるとされているんだな〜と思うなど。一方で福山陣営がSNSで「カネと政治」に言及して若者への支持を広げていることも認識していたので、現代的に考えても電話で話せる数なんて限られててそもそも関係性のある人間にしかリーチしないのだから、もっと真面目にSNSとかについて考えるべきでは?というツッコミを内に秘めました。
連合としてはとにかく今回の候補者は「政党が話し合って決めたこれまでの候補者」とは違い、「市民団体の代表が話し合って決めた人物像に合致する人として出馬を打診した」結果であると説明していて、節々に門川大作やこれまでの自民民主相乗りとは構図が違うことを強調していたのが印象的であった。(が、それが市民に真にそうだと信じられていることはないであろう…)また、自民党や国政と京都市政は無関係であるという主張も繰り返されていました。
西脇隆俊の挨拶は冒頭で能登地震への言及と京都府としての支援への理解を求め、その後は京都新聞の見出しでの「激しく競り合う」との表現を引用して危機感を表現し、その後は府市協調の重要性に言及。挨拶後、次の会場への移動ということで退出しようとしたところに、松井本人が登場。
いくら色んなところで「自分は門川大作の後継者ではない」と言っていても、このTHE 政治家な門川大作との様子を見て、その言葉を信じられるのか?とは思うが……
門川大作の挨拶では、16年前の中村和雄との950票差を制して自身が市長になったときのことを回顧し、連合が最後の最後まで投票を呼びかけてくれた結果だと感謝を述べていた。
門川大作といえば、自身のFacebookで松井候補を「後継」と表現する*4などして、絶妙に応援しているのかなんなのか分からない行動を取っていたのだけど、門川大作も元気に電話作戦をしているらしく「二之湯さんのポスター貼ってる近所の家にも電話しました。『二之湯さんに投票したら共産党になる』と言ったら分かってもらえました」と実績をアピール。ただまぁここでも、「二之湯さんに投票して、共産党の人になったら二之湯さんの責任が問われる」と謎の責任を登場させていました。
門川大作も同様に移動して行った後、京都退職者連合会長の木戸氏による挨拶。木戸氏は老獪らしいキレキレの挨拶で、「行政経験・行政能力に欠ける人が市政を担ったら、誤った判断をおこすことに繋がりかねない、気がつけば借金、(略)歪み、改革の名における摩擦が起き、痛みが生じるんです」と言っていた。これ福山候補批判のように聞こえるけど、よくよく考えると門川市政16年で起きたことそのままで、福山候補批判するフリをしながら門川市政を後ろからぶっ刺す高度なテクニックか?って思い、内心ではめっちゃ笑った。
最後に、松井本人の挨拶だったが、自身はいかに連合やその周辺にこれまで支えてもらったか(本人は当時の民主党から出馬し、2007年の参議院議員選挙において京都府選挙区でトップ当選を果たしている)や経緯を思い出話として語っていて、特に真新しいなにかもなかった。
最後の全員規律での「頑張ろう〜」コールが聞けるかと期待していたのに、アドリブで「絶対、勝つぞ」になった結果グダグダになっていたので、若干がっかり。
2月3日の福山和人街頭演説は屋外で寒いので、開始予定時間の10分前ほどに到着。支援者が少しずつ集まりつつ、福山和人を模したと思われる被り物を被った人物や謎のサル、謎の金色のブッダなどが既に登場しており、如何にも共産党という感じで盛り上がっていた。
街宣車が到着すると、誰よりも先に降りてきたは元京都市議会議員で今は日本共産党副委員長の倉林明子(手前の白い服の女性です)。
倉林明子はこのあともカメラを向けるとちょくちょく笑顔を向けてくれて流石だった。
フリージャーナリストの人のトークがあり、当たり障りの無いというか、特に真新しくもない現市政批判と、いかに福山和人が良いかという話だったので、引き続き倉林明子さんの写真を撮っていた。
手前でめちゃくちゃ威勢の良い合いの手を入れたり、パネルを掲げたりしている女性が居て、迫力のある運動員だな〜と思っていたところ、後ほど西郷南海子氏であることが分かりました。
さらに言うと僕の真横で阪神タイガースのケースに入ったスマホで様子を撮影していた若者もめちゃくちゃ威勢の良い合いの手を途中から放っていて、ピンクのウインドブレーカーだったので、まさかのれいわ関係者かと思いましたが、終わったら倉林明子と仲良く喋ってたので多分色はたまたまのようでした。
そして福山和人本人の演説へ。まぁこちらも新しい何かというよりはこれまでも彼のSNSなどで展開してきた「4人の中で政治資金パーティーを一度もやったことがないというのは福山だけです。お金に名前は書いてへんとよく言われます。けれども、紐はついていますよ。一旦お金を受け取ってしもたら、紐の向こうにいる人の言うことを聞かなあかんようになるじゃないですか。そういうものと全く無縁の福山。紐はついていません。何のしがらみもない、何の利権もありません。」*5を本当に言ってて、本物だ〜って喜んでいた。いや、まぁ横に共産党関係者がいっぱい居て、何のしがらみもないは嘘やろがいとは思いましたが……
あと、税金や福祉の話をするときに、北欧を引き合いに出して、「北欧は教育や医療が無料」「高い税金も教育や医療で自分たちに返ってくる納得感で払っている」と説明するのは、ここずっとリベラルの人たちが行う説明なんですが、これって実際どうなんですかねえ。こういうときに「海外」や「北欧」という大きな部分のごく一部を抜き出してユートピア化して説明するのはズルがあるのではないかと思いますが… 最近はこれに明石市の例も増えていて、その辺現実と理想、外から見えていることと内での出来事には乖離があるような気もしているので、一考の余地がある気はします。
ちなみにこの並びで福山和人の右側に立ってるのが、法然院貫主の梶田真章氏、その横に立っているのは16年前の市長選で門川大作に950票差で負けた中村和雄氏だったのですが、中村和雄氏は名前が紹介されただけでした。
そして最後に倉林明子の演説が始まりました。流石の倉林明子節、早速自民党の裏金問題を大批判、パー券批判の流れで松井・村山の名前を出さずに連想させるワードを挙げて批判するもここでも名前の出ない二之湯。松井陣営の使う「共産党市政」という言葉に対して、そのようなレッテルを貼り印象操作をしていると批判。まぁ一方でそもそも福山和人は共産党と関係ないはずなので、そもそも「共産党市政」にはなりませんと言うべきな気もするが、そこまでは流石に踏み込んだ否定までは誰も発しないのが、それを黙認してしまっているようにも感じる。
倉林明子の挨拶中に福山和人の姿が見えなくなったなと思ったら、地下鉄の入り口でビラ配りを始めていた。挨拶は横で最後まで聞いた方が良いのでは??
福山和人に声をかけている人が居たので、様子を見に行くと市内の某私立学校の生徒で、自身に選挙権がないが福山和人になって欲しいということを真剣に本人に訴えていた。これだけを見ると良い話な気もするが、実際SNSでのかなりの攻勢がこういう後継を生み出していると思う。前回の国政選挙でもTikTokをキッカケに参政党の若者支持が広がるなどもあったので、SNSで見える意見だけではなくそれをキッカケに色んな情報を集めて、ある種冷静に物事を見つめても良いのではないかとも思う。熱意があるのは良いことなので、この若者には今後も頑張って欲しいです。
と、まぁこういう情勢で、本日の投票日を迎えたわけですが、果たしてどうなっているでしょうか。
連合京都の会場で色々聞き耳を立てていると、二之湯との票割れを警戒しているようですが、その辺も投票率が上がれば全体としては薄まるという読みのようです。一方の福山陣営はとにかく残りの無党派層をとにかく選挙に行ってもらって票を入れてもらうことで、そのうちの何割かでもゲットできれば票が伸びるという算段。ここも結局は京都市民が門川大作市政には良くも悪くも辟易としているので、他の候補に入れるだろうという予想が垣間見れます。
個人的な予想も大局としては松井が勝つでしょうとは思います。一方で、多くの市民が「16年続いた門川大作市政からの脱却」も望んでいるように感じます。そして事実上の2候補による対決になっている今回の選挙において、松井・福山以外の候補に入れた票が生きることはないということもあります。他の候補に入れる行動を取ると実質的に松井の票が減るので、福山の勝率は上がっていく形になっています。このことを前提に、どれだけの有権者が苦虫を噛み潰しながら「松井こうじ」と投票用紙に書いたかが勝負になるかと思います。長年続いた門川大作市政からの脱却を望むか、それとも共産党には任せられないというイメージで苦々しくも現職後継を推さざるを得ないか、この戦いがどう決着するか非常に楽しみです。
また、ここから4年間の新しい市政で「門川大作の後継ではない」ことが本当になるのか、「すぐやるパッケージ」はすぐやられるのかそういうことにも注目していきたいですね。
この続きの記事の有料部分には、記事内で紹介した、2月2日の松井こうじ個人演説会の全録音と、2月3日福山和人街頭演説の全録画が置いてあります。よろしくお願いします。